チベットではモーニングコールができないので、代わりのもので起こしてくださいます。
なんと、ベッド・ティー!
濃く甘い熱いチャイをスタッフがドアの前でカップに注いでくれるのです。
体調は?とガイド長のカイラさんのチェックも入ります。
本当になんて贅沢な目覚め!
私はいつも ノックされる前に、廊下の音や気配でわくわくとドアの前で待っています。
カイラス2日目も早くから目覚め、朝食後、出発の6時30分に備えていました。
馬に乗ると聞いていたので、目一杯着込み、ネックウォーマーも顔半分覆って寒さに備えていた所、馬が来る所まで歩くからと。
500メートル程先の川を越えた所まで、さあ行こうか!先生の掛け声で、みんながうわーと歩き出し、
おっとがんばれ!自分にはっぱかけるつもりで歩き出したものの、もうすでに5,000メートルの山です!
いきなりはあはあ、ぜいぜい、
あかん、こんなペースじゃあ、と思ったらすぐカイラさんが横に来て、
「太田さん!ここでこんなにしんどかったらどうしますか?
ここからずっと高い所に行くんですよ!」叱咤激励だと思い、
「大丈夫です…もうちょっとゆっくり歩きます」と言ってる間に、
チベット人スタッフが風のようにやってきて私のリュックを奪い去ってくれました。
カイラさんに、「太田さんはマスクはダメ!顔出して!」
「はい」寒いとか言ってる場合じゃない、深呼吸だ!と
よろよろ歩いてたら、両サイドから仲間がサポートに入ってくれました。
「大丈夫?がんばりましょう!」本当にありがたくて、
「あ!川だ!」
川を越えたら馬に乗る!それを励みにぜいぜい息を上げながら歩きました。
しかも私はリュック無しで、楽なはず(^^;;
ヘッドライトを頼りに歩いてきた道が、ほんのり明るくなってきました。
次々と馬がやって来て、昨日と同じ馬子さんがそれぞれの仲間をピックアップしていきます。
座って呼吸を整え、さあいつでもどうぞと待っているうちに、あれ?私とUさんだけ?
気がつけば先生も仲間ももうとっくに見えなくなっています。
30分、1時間………
うそ!馬が来ない!
馬が来なかったらどうするの?昨年も参加されているUさんに尋ねるともなくつぶやくと、
「馬が来ない人は歩くって先生が。。。」
うそ。。。歩けない!馬で1時間も先に出た人達に私の足では追いつけない。
もう思いきり祈った!
お願い、早く来て!
馬!お願い!
Uさんが遠く川の向こうを指差して、あれ!太田さんの馬じゃない?
そんな点みたいなので、わからないと言ったら、絶対そうだ、だって私の馬は白馬だもん。
自信満々のUさん、じゃあそうかな?と思って待っていると馬を引いているのが馬子さんではなく、チベット人ガイドのkさんでした。カイラさんに馬を預けてまた引き返します。
Uさんの馬子さんが来ないので、私の馬子さんが迎えに行ったそうです。
「よくあることですから」
ひょうひょうと戻っていくガイドさんに、カイラさんはありえない!と怒って、
「馬のリーダーに出発時間は言ってある。こんなことネパールではありえない。
そんな人はすぐクビです!」
ネパール人は勤勉で慎重で日本人に似た気質なのかと思いました。
チベット人は遊牧民だから、いろいろとトラブっても、笑顔で
「チベットではよくあることですから」
今日食べるものがあったら美味しく食べる、明日食べるものがなかったら明日は食べない。
または親の家に行って食べる。1人で食べたら餓鬼(お腹が大きく膨れて手足がガリガリ)になるから、必ず友達とはわけあって食べるように、そういう風に育った人たち。
空港前の一等地にどんどん建っていくのは中国系のホテル、商店ばかり。
「こんなふうにどんどん増やそうとする中国人にチベット人が勝てる訳がありません。
もう20年もしたらチベットはなくなって全部中国」笑顔で淡々と語ったガイドさん。
待ってる間にと、チベット人スタッフとカイラさんが馬に毛布や鞍を乗せて準備を始めました。
そして、できたとカイラさんが馬に乗ろうとした途端、馬が暴れて両前脚を蹴り上げたのです!
「危ない!カイラさん!」
私は声も出ないくらい驚いた時、さすがです。
カイラさんは間一髪飛び降りて事なきを得たのですが、
馬が興奮して暴れて、抑えようとするスタッフを振り切り、ぐるぐる回って、
鞍も何もかも振り落として山の遠くへ走って行ってしまいました。
遠くからも牽制するかのようにいななき、走り回ってる裸馬。
「嫌だ。。。乗りたくないよ、この馬は。」
気持ちがどよ〜んと沈みました。
そこへ馬子さんがやってきて、尋常じゃない雰囲気に馬をなだめに行きました。
馬子さんだから、どうにか連れ戻ってきて、もう一度鞍などセットして…
もう8時過ぎ、私とUさんは1時間半遅れで出発する事になりました。